『これは、少し未来のお話。いつかって?まだ言えぬ。言えぬが、いずれ知ることになるだろう。ほんとにいずれわかるの?そのまま忘れちゃわない?』
【アサナシアちゃんうるさいなぁ。まだ決めてないとかではないよ?ほんとだよ?それはもう綿密にこの先の運命を決めてある……よ?外部からの刺激で運命がぶれるかもしれないけど概ね決まってるってのはホントのホントだから。そういや初配信からどのくらい経ってる想定だっけ?そこら辺の設定ちゃんと詰めてたっけ?とか考えてないからね!いや、その……適当ですんませんした!】◇◇ 俺はただ小さい子が好きな大学生だ。ロリコン野郎と呼びたければ好きにすればいい。が、病気だの異常者だのとライン越えをしてくる奴らは覚悟しておくことだな。俺は金をそれなりに持っている側だからね、弁護士挟んで徹底的にやりあおうじゃないか。まぁそんなこと今はどうでもいい。今日は俺のモーニングルーティンを紹介しようと思う。 朝起きてまずするのはSNSのチェックだ。俺の推しはゲリラ配信が多いからね、こまめな確認が必須なんだよ。それに比べてどうでもいいけど仕事の連絡が来てるかの確認もする。まぁ推し活と大学の次くらいには大事だから確認はするけど正直趣味の範疇だ。この伝がいずれ推しの役に立つかもしれないし、これも一種の推し活か。 これでも昔よりは前向きに向き合ってはいるのだから許して欲しい。推しのYURAちゃんが言ったのだ。「何か一芸を引っさげて来てくれたらリスナーでもコラボをする」と。ただ俺もまだまだ道半ば。生半可な一芸でコラボを持ちかける訳にはいかない。まずはファンアートからだろう。おっと、思考が逸れてしまったか。 適当にメールを返したあとは朝食だ。前は朝食を抜くことも多々あったのだが今では毎日食べている。今日もたくあんが美味い。日本人たるもの朝はおひたしにお味噌汁。漬物に焼き魚、納豆ご飯だと思うのですよ。一応言っておくが朝からメニュー考えるの面倒だから朝食を固定してるとかではない。断じて。 締切の直前になると遅くまで作業するので一限目は何も入っていない。朝はまったりご飯を食べながら切り抜きを見返すのが最近のマイブームだ。てかマジたくあんうめぇ。<「諸君、今日は七夕だぞ!願い事は短冊に書いたかね。」――書いてるわけwww――俺らがそういう年間行事に参加してると本気で思ってるん?――七夕ゼリー美味しかったー!――学校で書かされたから当たり障りないこと書いた――え?この中に学生が?しかもピュアな子が……――今年の七夕ゼリー凍ってたんだけど……――いやいやいや、まだおっさんが擬態してる可能性が……――先月返ってきた全統模試ボロボロだったから次こそは良い点取れるようにって書いた――ガチだ……「やっぱり私は世代問わず愛されるスーパーVTuberな私はチョベリg…最高だぜ!それにしても七夕ゼリーか〜懐かしいね。うちの学校めっちゃシャリシャリだったな〜。ゼリーに求めてる食感それじゃねぇよって出る度に思ってたよ。」――自惚れ乙――チョベリグとか今どき誰が使うん――やっぱりお前年齢詐称やろ――一応前世持ちって設定あるから……――ゼリーにシャリシャリを求めてないのはそう――必死に体温でゼリー溶かしてたなぁ〜懐かしい――俺冷てぇ冷てぇ言いながら溶かしてたわ「私は幼女です!自称幼女じゃないです!年齢詐称して幼女名乗ってるおばさんじゃないです!なんちゃって幼女じゃない本物です!」――なんかこれ各方面刺してね?――それな――年齢詐称、VTuberは結構してるからね――今どきバカ正直に実年齢でやってるVTuberがどれだけいるのか……――おいコラやめろ――年齢可変式とか言いながら酒飲んでる自称18歳いるしね――やめてさしあげろ!――そういえばYURAちゃんは何お願いしたの?「よーくぞ聞いてくれました!」――あぁ〜失敗した――すぐ調子乗るんだから――聞いて欲しそうにしてるのはみんなわかった上でスルーしてたのにさ〜空気読めよな〜――ガチ草「ひっでぇ!で、私の夢だっけ?2次元、3次元の垣根を越えて活躍することだよ!俳優業とかモデル業もしてみたいんだよね私。せっかく個人勢で好き勝手できるんだから顔出ししてリアルでも活動したいじゃん?」――VTuberが声優とかするのは見かけるけど俳優かぁ――やめろー現実を見せるなー!――モデルかぁ……雑誌に載ったら買いに行かなきゃか。ファッション雑誌買いに外出たくないなぁ――女性ものファッション雑誌買ってる中年おっさんとか俺見苦しくない?大
「お、帰ってきたっぽいから私出てくるね。あ、お兄さんもお出迎えする?お姉ちゃんとおかえりなさいのキスとかしたい?それなら一応見ないように目は瞑っておくから恥ずかしくて見られたくないなら予め教えてくれるとこっちも配慮できるからね!」「配慮できるからね!じゃないんだよバカ妹!お兄はこんなバカの言うことなんて気にしなくていいからね!なんなら今すぐ忘れてもいいだよ?こう……頭を私の膝でガンってやって忘れさせてあげようか?」「ちょいちょいちょーい!」「YURAちゃんどうしたの?」「恥ずかしいからってすぐネタに走るんじゃーないよぉ!」――急に流れ変わったよね――可愛らしい姉妹喧嘩のはずが急に物騒な話に……――あかねちゃん、今のはちょっと怖いよ――ちょっと照れちゃって〜っていじれるラインを越えてて草――こういうのするのYURAちゃんだと思ってた――それな――まさかあかねちゃんがそのポジに収まるとはね「あんなよくわかんないの挟んだあとじゃいまいちボイスに集中できないだろうけど、そこはもうそういうもんだと諦めてね。じゃあちょい前から続きいくよ!ゴホンッ……お姉ちゃん恥ずかしがってるみたいだから代わりに私がお兄さんの相手してあげるね!どうする?膝枕とかしちゃう?耳かきとかする?」「ふーん?年下の女の子に膝枕とかされちゃうんだ?ふふっ、素直でよろしい!まぁちょっぴり情けない気もするけどね。ほれほれ〜お姉ちゃんはこのままでいいのかなぁー?だーい好きなお兄さんが妹の私に盗られちゃうよ〜?」「べ、別に好きとかじゃないけど……。ちょ、ちょっと待って!一旦休憩!一旦休憩ちょうだい!の、喉が渇いちゃって。」「こんなこと言いたくないんだけどさぁ。あかねママ、今ライブなのよ。恥ずかしいからって止めないでやらなきゃなんだよ?わかる?」――そうだそうだー!――ライブでやってるのにそんなにすぐ止めてちゃ話に集中できないだろー!――素で照れとるやんけwww――YURAちゃんにそんなこと言わせるなー!――俺らは照れてるあかねちゃんを見たいんだー!止めずに照れてるところを見せろー!「素で照れちゃってるあかねママガチ可愛いんだけども。」「や、やめろー!」
「ゴホッゴホッゴホッ……ふぅ。歳はとりたくないもんだな。」 誤魔化しながらこれまで過ごしてきた。自分の身体の丈夫さには自信があったし、今由良の前で弱っているところを見せてしまえばあの子の心の傷をえぐることになるかもしれない以上病気の可能性を彼女に示すわけにはいかなかった。「敏夫さん、大丈夫ですか?ここ最近やけに咳が多いですけど……。念の為に病院で検査してもらった方がいいんじゃないですか?私たちも歳ですし。」「なーにただの風邪だ。どうってことはないさ。歳だからかちと治りが遅くなってるだけだよ。少しの間休んでいれば治るから心配せんでいい。」 ただの風邪じゃないのはわかっている。呼吸の度に胸が痛むし、咳もなかなか治らない。俺ももう歳だ。良くて肺炎だろう。最悪の場合……███だろう。「そんなこと言って何か重い病気だったらどうするんですか!。もしなにかの病気ならすぐに治療しないと手遅れになるかもしれない。そしたらあの子を……由良を残して死ぬことになるんですよ!ほんとにそれでいいんですか!?」 もちろんそんなことをするつもりはない。ただ怖いんだ。あの子の成長を見守ることはもうできないと宣告されることが。あの子のことを傷付けることが。「それは……だなぁ。」 無理だった。死ぬもしれない。もしかしたら明日にでも体調が悪くなって倒れるかもしれない。病院に行っても本格的な治療を行えるほどの力は今の俺には残っていない。「見損ないました。あなたが死んだらあの子はまた大切な家族を亡くすことになる。そしたらあの子はまた心に傷を負う。あんなに幼い子に二度も……。」 それなら俺は最期まで……命が燃え尽きるその瞬間まで……「あの子の心の傷が癒えることはないかもしれない。あの子はもう立ち直れないかもしれない。それなのに敏夫さんは!そんな自分のプライドやら変な自信を優先して本当に大事なものを見失った敏夫さんなんてもう知りません。もう好きにしたらいいんじゃないですか?」 あの子の隣にいたい。
「茶番はさておきまして、何歌う?」「茶番って何さ茶番って!私の配信者生命がかかってたんだよ?綺麗に燃え尽きるところだったんだよ?」「おじさん構文歌おっか。あかねママはおじさん側ね!」「そんな……私はどこまでもネタ枠なのか。どうしてこうなってしまったんだ!私は清楚枠のはずだったのに!」「草ァ。」――ホントの清楚は自分で清楚って言わない定期――俺らもあかねちゃんは清楚だと思ってたのにどこで道を間違えたんだろうな――YURAちゃんとコラボしてない時はちゃんと清楚なんだけどね――でもYURAちゃんとコラボしてる時のあかねちゃんはどう見たってイロモノ枠――あーこりゃまた不思議なこともあるもんだ◇◇――こいつらちゃんと歌うの上手いんよなぁ――それな、歌うま勢が全力でネタに走ってるのってめっちゃ反応に困る――こういう時、どんな顔すればいいのか分からないの――俺はあんまりアニメとか見ないからよくわかんないんだけど笑えばいいと思うよ「さてと、かれこれ六曲も歌ったわけだけど、そろそろみんなのお待ちかねの自律神経絶頂反応に移りますかね。正直私は喉が疲れたからもう歌いたくない!というわけでノリで話すからあかねママは私に合わせてね!」 「え?ちょっと待っ……」――YURAちゃんって人を振り回すの上手すぎひん?――なんだかんだあかねちゃんも楽しそうだし良きかな良きかな――あかねちゃんとYURAちゃんのノリで始まったシチュボはどんな感じになるんだろう――秒でグダると思う。あかねちゃんアドリブ苦手だし――あかねちゃんのアドリブの件は否定のしょうがないね。でもまぁYURAちゃんが上手いことやるんじゃない?――だといいけど……YURAちゃんっていたずらっ子だからテンパってるあかねちゃん見て楽しまないとも言いきれないというか……「あ、相手は男性想定ね?じゃあいっきまーす!あ、お兄さんお仕事お疲れ様です。今日は早いんですね。ん?なんで家にいるのかって?お兄さんのお母さんに頼まれたんですよ。家事はろくにできないから毎日外食か出前で食事を済ませているからたまにで良いからめんどうをみてやってくれって。お姉ちゃんも一緒に来てるんですよ?今ちょうど買い出しに……」
「きゃー初対面の酔っ払いに絡まれるー!ピーーなことよやピーーなことされちゃうー!」 「え、ちょっマジでやめろ。」 「やーいやーい!絵面犯罪者ー!」 「や、やめろー!」 ――ガチ草 ――これはちょっと擁護のしようがない ――初対面の幼女を自宅に連れ込んだ挙句飲酒してだる絡み。うーん黒っすね ――アウトー ――あかねちゃん、君のことは忘れないよ ――もしもしポリスメーン? ――あかねちゃん……自首、しょっか このコント楽しい。やっばいクセになりそう。 「味方がいない……だと?」 「強いて言えば少しでもあかねママの罪を軽くしようと自首を進めてる人が味方なんじゃないかな。知らんけど。」 「酷いよ、みんな酷すぎるよ!」 「緊張を和らげるために飲んだんだろうけどさ、私未成年なんだよね。言いたいこと、わかる?」 「すんませんした。」 「よし、許す。それじゃそろそろタイトルコール言ってみよ〜!今回やっていくのは〜?特にすることないからあかねママの家の設備使い倒してみた!」 「もしかしなくても今考えた?一週間あったよね?」 「今考えました。さーせん。これに関しては私が悪いわ。悪いは悪いんだけどさぁ。あかねママは大人だよね?私は一応幼女なんだから大人としてもうちょっとしっかりしてくれると助かるかな?」 マジで今のところ酒に頼ってる人だからね?もうちょっと頑張ろ?良いとこ見せて? 「家の設備かぁ……とりあえず歌っとく?自律神経絶頂反応でもいいけど休日の昼間っからなんか違うし。」 おいコラあかねママ、目逸らしてんじゃねぇよ。でもまぁいいよ。あかねママはそういう人だったってことでしょ?ちょっとこれからの付き合い方を考え直さなきゃいけないみたいだよ。 「そうだね。自律神経絶頂反応は歌がひと段落したらにしよっか。」 「やめて!そんな冷めた目で見ないで!心底失望したみたいな目で私を見るなー!」 「草」 「草じゃないが!?」 ――こいつら仲良しかよ ――仲良しだが? ――なお初対面 ――長年コンビ組んでたくらいの掛け合いで草 ――おーい企画ー! ――てか自律神経絶頂反応、自律神経絶頂反応っていちいち長いんだよ!ASMRと言えASMRと! ――あ、それASMRのことだったんか ――ほらー!伝わってない人もいる! き、気
「はいどうも〜!YURAちゃんのママやってる狐火あかねです!そしてそして〜!」え?どしたん?「狐火さん狐火さん、急にそんなテンション上げてどうしたんですか?」――あかねちゃん!?――え?なんか変なものでも食べた?――YURAちゃんもちょっと引いてるやんwww「ほらほら〜!じ・こ・しょ・う・か・い!」「あ、はい。前世の経験を活かして世界征服を目論む最つよVTuberのYURAです!今日はオフコラボということで緊張もありますが、精一杯頑張らせていただきます!」「ちょっとYURAちゃ〜ん!固い、固すぎるよ!建付けの悪い引き戸くらい動きが固いよ!もっと肩の力抜いてこうよぉ。と、いうわけでオフコラボやっていくどー!」「や、やっていくどー!ってマジでどうしたんです?」「私もね、こうやって今YURAちゃんとオフコラボできてることに感慨深いものがあるわけですよ。」「お、おう……。」「大学三年生ともなると周りが就職に向けて動き始めるんですよ。かくいう私もこの配信活動をすっぱり辞めて就活に専念しようかとも考えてたんですよ。私は初配信でスタートダッシュを決められなかったのもあって大学卒業後も配信を続けていくビジョンが見えなかったので。」いやいやいや、何言ってんの?私がイレギュラーなだけで新人VTuberはそんなもんだってば。むしろ多い方だったよ?だからこそ私は見つけられたんだよ?キラキラした面ばっかり見て憧れて目指してたんならそのギャップに苦しむよね。「続けたところでなんの成果も得られず、後にも引けずでズルズル行くだけなんじゃないかって思ってたんですよ。それじゃ色々手伝ってくれていた両親に申し訳がないので別の道に進もうかと考えてた時に来たのがYURAちゃんからのコラボの誘いだったんで